首相提案「マスク会食」不評 「着脱難しい」「酔ったら無理」
2020/11/28 6:00 (2020/11/28 6:16 更新) 西日本新聞 総合面 前田 倫之

 ≪静かなマスク会食≫。菅義偉首相が、新型コロナウイルス感染症対策として提案した
キャッチフレーズに戸惑いが広がっている。専門家組織である政府の分科会の「お墨付き」がある半面、
ネット上や専門家からは「現実的に難しい」と疑問視する声も上がる。

 26日朝。首相は官邸近くのホテルのレストランで、政治ジャーナリストの田崎史郎氏と会食。
2人は席の間隔を開け、会話中はマスクを着用し“新しい会食マナー”を率先垂範した。

 首相が静かなマスク会食を国民に呼び掛けたのは、全国の新型コロナ感染者数が最多となった19日。
もともとは11月に入り、分科会の尾身茂会長が感染リスクを抑えながら
会食を楽しむ方法として紹介。目を付けた首相が命名し、打ち上げたとされる。

 政府高官は「キャッチーな言葉。分かりやすい」と自賛するが、実際には苦肉の策の面が強い。
人の移動や会食の機会を極力制限せず、観光・外食産業の下支えを継続しながら、
国民が取り組みやすい新たな感染抑止策を示す、しかも予算を掛けずに―。
こんな連立方程式を解くのは容易なことではないからだ。

 「他に打つ手はないのか」「着けたり外したり、難しい」「マスクしてまで会食したくない」
「酔ったら無理」…。流行の「第3波」が深刻化する中、ネット上での評判は芳しいとは言えない。

 感染症に詳しい沖縄県立中部病院の高山義浩医師は「いや、総理ちがいます。
飲食店のマスク着用などザルですよ」とフェイスブックに投稿し、「いいね」のコメントが集まった。

長野保健医療大の塚田ゆみ子助教(公衆衛生看護)は「会食中にマスクの着脱を繰り返すと、
マスクの外側に付着したウイルスが内側に付く恐れがある」と指摘。「料理が来たら黙々と楽しみ、
終わればマスクをして会話をする。これを徹底しないと逆に感染リスクが高まる」と心配する。

 安倍晋三前首相が採用し、政権支持率低下につながった
「アベノマスク」を想起させるとの受け止めもあるが、今回の≪マスク≫の成否はどう出るか。
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