しかし結局、多くの大学がこの方法をとらず、秋に授業が再開されると感染者が急増する事態
となった。

同僚らによると、ワレンスキ氏はHIV研究を通じて保健上の格差にも関心を寄せるようになった。
バイデン氏が取り組むことを約束している問題だ。

新型コロナの専門家としてテレビ出演もしているワレンスキ氏は、白人以外が暮らす地域社会
で最大の被害が生じていることをたびたび指摘してきた。トランプ大統領が感染して投与を受
けた抗体治療薬についても、貧しい人たちは経済的理由で使えないのではないかとの懸念を表
している。

「彼女は人種差別やジェンダー格差についてよく話す」とマサチューセッツ総合病院の感染症
部門の同僚、ロバート・ゴールドスタイン氏は言う。「例えば新型コロナワクチンの接種計画
では、最も打撃を受けている人たちにどう行き渡らせるかを熱心に語る」

ワレンスキ氏にとって感染拡大の阻止が最大の課題だが、CDCの予算増額に向けて議会を動かす
など、科学者としては退屈な政治的課題にも対処しなければならない。

現所長のロバート・レッドフィールド氏は今年、わずか80億ドル(約8300億円)足らずのCDCの
裁量予算を2〜3倍に増やすよう求めた。上院歳出委員会が11月に勧告した予算の増額率は約2.5%だ。

CDC内の士気も回復させなければならない。検査から旅行規制に関する勧告まであらゆる事柄で
トランプ政権の高官と衝突し、幹部の多くが意気をくじかれているからだ。

同僚らは彼女が長期的にCDCを率いるのにうってつけの手腕の持ち主だとみる一方、政治的経験
が乏しいため、組織の問題への対処で苦労するのではないかとも心配する。

「彼女の他者と意思疎通を図る力は抜群で、CDCで大きな変革を生み出せる素晴らしい地位に就
く」とハーバード大のブルーム教授は言う。「内情がつかめ次第、ということだが」
By Kiran Stacy & Hannah Kuchler
(2020年12月9日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/