ワレンスキ氏は米国立衛生研究所(NIH)の顧問を務めたことがあるが、これまで政府機関で働
いたことはなく、CDC所長への起用は異色だ。

就任後はバイデン政権のコロナ対策で前面に立つ1人となる。対策の提言を聞き入れない大統領
の下で脇に追いやられたCDCにしっかり予算を確保し、職員の士気を回復させる任務も負う。

マサチューセッツ総合病院のピーター・スレーブン院長は言う。「彼女はずば抜けたコミュニ
ケーション能力の持ち主だ。専門家でも一般人でも相手に応じて的確に話せる。次の仕事でも
それが極めて重要になるだろう」

ワレンスキ氏はコメントの要請に応じなかった。エイズウイルス(HIV)研究者として名を上げ
た同氏は、エイズ治療で延びた患者の寿命は米国全体で合計300万年近くに及ぶとする分析をま
とめ、称賛を浴びた。

米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長と出会ったのも、HIV研究をしてい
るときだった。バイデン氏はファウチ氏も新設ポスト「大統領首席医療顧問(コロナ担当)」
に充て、コロナ対策チームに加える。

ファウチ氏はワレンスキ氏について「とても包容力のある人柄で、CDCがやる気を取り戻す上で
まさに適任といえる。この1年はひどかった」とフィナンシャル・タイムズ(FT)紙に語った。

ワレンスキ氏はエイズ禍に関する分析で、検査と予防、早期治療が鍵であり、費用はかかって
も感染拡大の監視を強化することが長期的なコスト低減につながると指摘した。
今年、同氏は研究の中心を新型コロナに移し、同様の結論に達している。

組織内の問題への対処で苦労も
ワレンスキ氏は、大学再開後にキャンパスでウイルス感染がどのように広がりそうかモデル化
して調べる研究チームの一員だった。その研究から、全ての学生と教職員を対象に2日ごとに
低費用の検査を行うのが最もコスト効率に優れた感染抑制の最善策であるとの結論を導き出し
た。検査結果に誤判定が伴っても、これが感染拡大を防ぐ最善の方法であることが示された。