パートナー認証制度で春日部市議「差別は存在しない」 加藤真太郎 2020年11月11日 22時10分

 埼玉県春日部市議会の井上英治市議(71、無所属)が9月議会で、
同性同士で生活する人も家族として扱う「パートナーシップの認証制度」の早期創設などを
市に求める請願をめぐり、「(差別は)市内には実際に存在しない」などと発言し、波紋を広げている。
当事者支援団体が発言に抗議して撤回を要求。市議会議長が「おわび」を出す事態となっている。

 請願は、市民から出された「春日部市におけるパートナーシップの認証制度および性的少数者に
関する諸問題への取り組みに関する請願」。市の教育や医療など行政活動で
「性自認や性的指向に関する理解の増進を図ることを目的とした施策」を求める内容。
9月18日の本会議で井上氏を除く議員が賛成し、採択された。

 市議会の録画映像によると、井上氏は15日の一般質問で、市教育委員会のいじめ相談窓口での
LGBTに関する相談件数が過去2年間ゼロだったなどとする市の答弁を踏まえ、18日の本会議で
「請願は差別を解消して欲しいと言いながら、教育委員会のいじめ相談窓口などの活用もせず、
市内には実際に存在しない差別があると言っている」と主張。「同性カップルよりも、
男女間の婚姻を優遇するのは、出産、子育てを考えれば当然のことという認識が国民に浸透している」
「狙いは明らかにLGBT条例の実現」「共産主義者、左翼勢力の戦略を甘く見てはいけない」
「子どもたちにレズビアンやゲイを教える必要は全くない」などと述べた。

 こうした発言に、当事者支援団体「レインボーさいたまの会」は10月27日付で、
「(いじめなどを)当事者側から表面化させるのは困難」「周囲との関係に悩む多くの当事者を、
さらに攻撃し自己肯定感を傷つけるものだ」などとする抗議声明をホームページに出した。
同30日には佐藤一市議会議長が「この発言で不快な思いをした方々に心からおわび申し上げます。
性の多様化に対する諸問題の解決に自治体としてしっかりと対応していくことが求められている。
差別のない、人権を尊重する市政の実現に引き続き努める」とするコメントを出した。

 井上氏は11日、記者会見し、「差別感や偏見は持っていない。市内に問題ある差別は
存在しない」と述べた。また、「私を批判するのは自由だが言論の自由を認めるべきだ。
議会は反社会的でない意見ならば自由に賛否を述べる場だ。
謝罪の必要はないし、発言の撤回もしない」と語った。(加藤真太郎)
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