>>612

 バイデン氏は大統領選で勝利しても、本当の意味での大統領にはなれないことに
おそらく心の奥底では気付いているのではないか。
バイデン氏は仮面をかぶった人質のような存在になって、
ホワイトハウスの居住区のどこかにある金ぴかの独房から心強い決まり文句を発し、
ときどきその日の新聞を手に現れて、自分はまだ大丈夫だ、
監禁者の言うことを聞いていれば全てがうまくいく、とわれわれに言い聞かせるだろう。

 そしてあってはならないことだが、バイデン氏が迫りくる老衰の影響に屈することが
あれば、ホワイトハウスでは映画「バーニーズ あぶない!?ウィークエンド」のように、
見境がつかなくなった若者が悪事に走り回り、一方で、引きつった笑みを浮かべた
サングラス姿のバイデン氏がまるで健康であるかのように大統領執務室のデスクに
座らされるだろう。この数カ月間に及ぶ選挙遊説でのバイデン氏の影の薄さを考えると、
その違いに気付く人はいないのではないか。

 こう書くと、民主党員一筋だったバイデン氏に甘すぎる、バイデン氏は結局、
政治的に流される党に何のためらいもなくついてきたじゃないか、求められれば政敵への
「ハイテクリンチ」に反対せず、同僚が作り上げた過度に党派的な偽善とごまかしを
認めてきたじゃないか、という反対の声が聞こえてきそうだ。

 おそらくその通りなのだろう。妥協しない人々に譲歩してキャリアを築いた人間は、
大統領になっても本当の意味での大統領にはなれないという妥協を
長いキャリアの最後を飾るにふさわしい結末として受け止めるかもしれない。

 バイデン氏は本当にこうしたことを望んでいるのだろうか。
ひょっとすると本人は覚えてさえいないかもしれない。

https://jp.wsj.com/articles/SB10827918526648824440904587006872813585832