違法ではないが、道義としてどうか…新・菅政権の核心「自助」の源流を作った竹中平蔵のズルさとは
9/14(月) 17:01配信 文春オンライン

橋本健二『<格差>と<階級>の戦後史』に印象的な一文がある。「一九九九年二月、その後の日本の運命を決定づけたといってもいい答申が発表された。経済戦略会議の『日本経済再生への戦略』である」。
冒頭で記したように竹中平蔵はこの経済戦略会議の委員であった。そしてこの答申は平等・公平を重んじる社会から自己責任・自助努力の競争社会への転換を謳うのである。

これによって規制緩和が進められ、労働市場の流動化を図った結果、非正規雇用の増大を招くなどする。
経済戦略会議の委員だった中谷巌は「あるべき社会とは何かという問いに答えることなく、すべてを市場まかせにしてきた『改革』のツケが、経済のみならず、社会の荒廃をも招いてしまった」と、
文藝春秋2009年3月号掲載の「竹中平蔵君、僕は間違えた」と題する小論で自己批判する。

もちろん竹中平蔵は「間違えた」などとは思ってはいまい。なにしろ規制緩和によってできた市場で儲けるパソナの会長になったくらいだ。

麻生太郎や民主党は竹中平蔵を嫌ったが、安倍晋三が首相となった翌月の2013年1月、新設された産業競争力会議の場にさっそく竹中平蔵はいた。
そして今日にいたるまで政治に影響を及ぼし、菅義偉も安倍政権の継承をいうくらいだから、今後もそれが続くだろう。

佐々木実『市場と権力』は、竹中平蔵のピカレスクであると同時に、この先も社会が抱え続けるであろう宿痾がいかにして生まれ、
肥大化していったのかを知るという点において、7年前に書かれたものでありながら、今現在を書いたノンフィクションなのである。