難民問題の5年…「メルケルの一言」がドイツとEUの姿を激変させた
9/18(金) 10:01配信 現代ビジネス

5年前の今ごろ

メルケル首相は2度、“アンネ・ヴィル(公共放送第1テレビのトークショーの題名)”に単独ゲストとして出演した。
シェヴェニケ氏曰く、「その番組の中でメルケルは2度とも、まさに降伏宣言とも言える壊滅的な言葉を吐く:あと何人がドイツに入国するのかは、我々が決められることではないのです」。
自国に、誰が何人、どこから入ってくるか決められないと言うのは、主権の放棄に等しい。
国民の安全を守るためには、国家は国境を防衛しなければならないが、この期間、ドイツはそれができない状態だった。
ドイツは毎日、ミュンヘン駅に続々と到着する何万人もの中東難民を大歓迎する人たちで大いに沸いていた。
こうして、この年だけで89万人の難民が入国。
しかも、それはメルケル首相の致命傷になるどころか、その名声を高める結果となった。

難民受け入れ第2波の予感

そして今、ドイツ国民の一部では、レスボス島の難民を引き取ろうと言う声が急激に高まっている。
緑の党は、レスボス島にいる難民全員をドイツが引き取り、その後、EUに振り分ければ良いと言っている(現実は、長年のあいだ、EUの多くの国が難民引取を断固拒否しているからこそ、こういう事態になっているのだが)。
すると、多くのメディアまでが、競うように難民の惨状を報じ始めた。それも、「EUの無力の証明」などと政治批判に余念がない。これまで難民キャンプの様子などほとんど取り上げなかったくせに、偽善もいいところだ。
ただ、こうなると、流石に政治家も見て見ぬ振りはできない。これまで、「ドイツのスタンドプレーは好ましくない」と言って引き取りを躊躇っていた内相も、モラルの圧力に抵抗しきれなくなったらしく、11日、保護者のいない未成年者を150人引き取ると発表した。
しかし、その途端、「たったの150人とは何事か!」と、さらに激しい非難が殺到してしまった。結局、15日、ドイツはそれに加えて、さらに1553人の子供連れの家族難民の引取を発表。ただ、これで批判の声が収まるかどうかは、まだわからない。
その一方で、難民の受け入れなどもってのほか、という意見も根強い。モリアにいる難民は多くが経済難民なので、彼らを受け入れ始めたらキリが無くなる。アフリカや中東には、まだ何百万人も後に続こうとしている人たちがいるのだ。
また、国境侵犯で入ってきた人たちを、EUが受け入れなければならないという法的根拠も希薄だし、火を点ければ難民の要求が通るというのも、言われてみればおかしな話だ。