別のキャリア官僚は「緊張状態が一段と悪化している。彼らは科学者が自由に話せないよ
うにするだろう。我々がすること、言うこと全てを統制しようとしている」と述べた。

ハーバード大学のアシシュ・ジャー教授(国際保健)はこう指摘する。「ここにきて、ト
ランプの政治任用者による介入がはるかにひどくなったことは疑いようがない。コロナ禍
はひどい状態であるのに、大統領は終わったことにしようと必死だ。保健当局は全面協力
には応じていない」

トランプ氏は当初から米国の科学界と衝突し、新型コロナの深刻さと対応策、必要な検査
数などについて、公然と政府当局者の見解と異なる発言をしていた。
そうした緊張関係の一端をうかがわせたのが、レッドフィールドCDC所長の16日の発言に
対する同日夜のトランプ氏の非難だ。

レッドフィールド氏は上院小委員会の公聴会で、ワクチンが広く行き渡るようになるのは
2021年後半との見通しを示し、マスク着用のほうがワクチン接種よりも感染防止に有効に
なるかもしれないと付け加えた。その数時間後、ワクチンは年内に出回るとするトランプ
氏は、政府内で最上級の科学官僚であるレッドフィールド氏について「たぶん彼は間違え
たのだと思う」と述べた。

政府関係者は、保健当局者をおとしめようとするトランプ氏とその政治任用者の最近の動
きの一つと受け止めている。

アザール厚生長官は8月、研究機関で開発された新型コロナ検査は厚生省傘下の米食品医
薬品局(FDA)の承認を不要とすると発表した。FDA内の関係者がFTに語ったところでは、
精度の低い検査が出回ることになりかねないと同局のハーン長官が懸念を示していたに
もかかわらず、アザール氏が決定を下したという。

「アレックス・アザールは検査が足りないと責められないよう必死になっている」とハー
ン氏に近い筋は話す。厚生省はコメントの要請に応じなかった。