>>811の続き

 前回総裁選で支援を得た参院竹下派の支持を取り付けられないか探る側近もいたが、
時既に遅し。竹下派を含む主要派閥は菅氏支援に走りだしていた。開けぬ展望に、
石破派内の結束はぐらついた。

 8月31日。石破氏は出馬の決意を固める。連判状が派内に回った。背水の覚悟を
示すため血判状を作ろう、との声も上がった。「今後、党内でどんな冷や飯を
食わされようが、もう戦うしかない」。派の閣僚経験者はつぶやいた。

 首相は周囲に「石破嫌い」を公言。後継を決めるこの総裁選でも、石破氏を勝たせない
環境整備を最優先しているのは明らかだ。かつて首相在任中、石破氏から退陣を
迫られたとされる麻生太郎氏も同じ姿勢。最大派閥・細田派の一人は「『石破だけは
許さない』との声は多い」と証言する。なぜ、そうなのか−。

 主な理由として指摘されるのが、閣僚や党幹部であっても遠慮なく批判する政治姿勢。
第2次安倍政権では、森友、加計(かけ)学園や桜を見る会の問題などが報じられる
たびに「説明すべきだ」と注文。党内から「また、後ろから鉄砲を撃っている」と白眼視された。

 政界遊泳術も巧みでない。石破氏のために走り回った参院竹下派のベテランは
前回総裁選後、一言も言葉を交わしていないと苦い表情。「次も出たいなら、会いに
来るのが筋だろうに」

 地方県連の予備選で首位を奪い、党内にあらためて「選挙の顔」となり得る存在感を
誇示し、来年に勝負を懸けたい石破氏。テレビなどで露出を続けるが、「いばらの道」
(派閥幹部)には変わりない。