黒岩、県民の個人情報をゴミに売り渡す

神奈川県は今年3月、災害時の安否不明者・死者の氏名を速やかに原則公表する独自の運用を始めた。氏名公表を巡っては国の統一基準がなく、熊本県が7月豪雨災害から遺族の同意を公表の条件にするなど全国の自治体で対応が分かれている。「神奈川方式」の
意義について、黒岩祐治知事に聞いた。(東京支社・並松昭光、嶋田昇平)
−独自方式導入の経緯を教えてください。
「ジャーナリズムの現場にいた人間として、情報は基本的に速やかに公開すべきだと考えてきた。国民の『知る権利』に応えるためだ。実はこれまで、神奈川県に氏名公表の厳格な指針はなかったが、昨年、全国知事会の危機管理・防災特別委員長となり、今年3月に日本新聞協会から速やかな実名公表を求める
要望を受けた。これをチャンスと思い、県独自の対応を地域防災計画に明記した」
−実名を速やかに公開する意義は。
「特別委員会で各知事に尋ねると『行方不明者の氏名は救助活動に役立つ場合に公表する』『死者は遺族の同意が得られれば公表する』といった対応を取っていた。だが実際、救助に役立つかどうかや誰を家族と定義するのか、という判断は非常に難しい。
原理原則を決めておくことで、職員がそうした作業から解放される利点はある」
「だが、目的は行政の負担軽減ではなく、あくまで知る権利に応えるため。神奈川方式では氏名は報道機関だけに開示し、公表の判断は報道に委ねた。メディアの責任が問われることになる」
−プライバシー保護を理由に、死者の氏名を公表しない自治体もあります。
「交通事故や火災の死者は通常、ニュースで氏名が報道されている。情報は基本的に公開されるべきであり、この問題は匿名社会につながる入り口にあると考えている。突き詰めれば権力監視が働かない世の中になる」
「方針を決めた後の今年4月に県内で土砂崩れがあり、高齢の男性が亡くなった。県は原則に沿って、警察から情報を得た直後に氏名や年齢、大まかな住所を報道機関に情報提供した。初めての事例だったが、家族や県民からの抗議は1件もない。
『情報は速やかに出す』。そういうものだと社会に理解してもらうことが大事だ」
−国にはどのような対応を求めますか。
「災害対策基本法に、知事の権限で死者や不明者の氏名を公表できる規定を明記してもらいたい。実現すれば、国と知事会で運用のガイドラインもつくりたい。8月に開いた特別委でこの方針を決めた。災害シーズンに入っており、早急に知事会全体の合意を得て国に要望したい」
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