(社説)野党の合流 「元のさや」超える姿を 2020年8月21日 5時00分

 安倍政権に不満はあるが、さりとて野党は力不足で心もとない。
そんな国民の心を引き寄せることができるか、真価が問われるのはこれからである。

 立憲民主党(89人)と国民民主党(62人)による昨年来の合流協議がようやく決着した。
両党を解党し、新党を結成する。玉木雄一郎代表ら国民の一部は参加を見送るが、
無所属議員を含め衆参で150人規模の野党が生まれることになる。

 ただ、前回衆院選でバラバラになった旧民進党勢力が、
3年を経て「元のさや」に収まった印象は否めない。
民進党の前身である民主党は、国民の高い支持で政権交代を実現しながら、
政治主導の空回りや内紛で自壊した。信頼を取り戻すのは容易ではないと覚悟すべきだ。

 新党の綱領案は、基本理念の冒頭に「立憲主義と熟議を重んずる民主政治」を掲げた。
政策の基本方針としては、ジェンダー平等や原発ゼロ社会、格差の解消、
健全な日米同盟と「開かれた国益」の追求、公文書管理と情報公開の徹底などを盛り込んだ。
自公政権との対立軸に十分なりうるものだが、
課題は、こうした理念や方針を、いかに具体的な政策に落とし込み、実現するかである。(中略)

 新党に参加しない玉木氏ら国民の一部議員は、別の政党を立ち上げるとみられる。
しかし、その場合でも、国会での共闘や来たるべき総選挙での協力など、
これまで培ってきた野党間の連携は維持すべきだ。
 巨大与党に支えられた長期政権のおごりや緩みは明らかで、一向に自浄作用は働かない。
論戦回避、国会軽視も相変わらずで、憲法に基づく臨時国会の召集要求もたなざらしが続く。
コロナ対応を含め、政策面での迷走や行き詰まりも目立つ。

 今ここで野党が行政監視の役割を果たせず、自公政権に代わりうる有効な選択肢を示せないなら、
失われた政治への信頼は取り戻せまい。
その重い責任を引き受け、具体的な行動を通じて、合流の実を示して欲しい。
ttps://www.asahi.com/articles/DA3S14593331.html