「自然免疫」とは、抗体ができる前に作用する最初の免疫システムです。

新型コロナなどのウイルスや細菌の病原体の侵入後、直ちに働く人体の防御システムを自然免疫といいます。(白血球の一種である好中球やマクロファージが病原体を捕獲します)
そのほか、全身を常にパトロールしているリンパ球の一種であるナチュラルキラー細胞も外敵が侵入すると即座に攻撃し、病原体に感染した細胞も含めて人体から排除します。

※参考

コロナにBCGは「有効」なのか?東北大・大隅教授が緊急解説
https://diamond.jp/articles/-/234432

ほぼ100年の歴史があるBCG接種。実は疫学研究者は、このワクチン接種が結核予防以外の効果があるらしいことに気づいていた。
例えば、BCG接種によって小児の結核以外の理由、特に呼吸器感染症による死亡率も減少するという報告が、発展途上国だけでなく多数ある。
また、約3000人を60年間フォローアップして得られた米国のデータでは、幼児期のBCG接種が成人期以降の肺がんの発生リスクを下げる効果があると示されている。
さらに興味深いことに、BCG接種は膀胱がんの進行を抑えるという報告もあり、多数の臨床研究が進められている。
いったいどのようにして、結核に対するBCGワクチンが、それ以外の疾患に対しても効果を発揮する「オフターゲット効果」を示すのだろう?

BCG接種は、どうもこの「自然免疫」を刺激するらしいことが分かってきた。2012年にオランダのグループが行った研究では、
BCGワクチンは、インターフェロンγの産生を促すだけでなく、ヒトの免疫系細胞の1種である「単球」(マクロファージや樹状細胞に分化する細胞)を活性化し、種々のサイトカインを分泌させることがわかった。
この研究グループは、BCGのこのような効果を「訓練免疫(trained immunity)」という新たな概念として提唱している。つまり、自然免疫が働きやすくなるように“訓練された”状態になるというのだ。

つまり、「訓練免疫」とは、いわば「自然免疫」がパワーアップした状態と考えられる。BCG接種により、未知の病原体に対する抵抗力が高まる可能性があるのだ。