低い感度、バラバラな基準で「やってるふり」
――民間での検査が増えています。また、唾液による検体の採取とか、全自動検査システムなど、検査件数を拡大する方向で採用されています。

唾液検査について言えば、先ほど話した保存によるウイルス遺伝子量の低下は、唾液検体がいちばん起こしやすい。
簡単に唾液検体を集めて大量に検査するなら、よほど素早くやらねば、偽陰性の山になる。

感度を下げることに反対しているわけではない。たとえば100コピー以下は生きているウイルスもいないことだし「陰性」と判断する、というなら、
それを確固とした基準として統一しておく必要があるということだ。

基準の問題でいえばPCRを増やせという人たちが、よく外国での件数例を挙げる。確かに中国の各都市では今、無症状者を含め何万人単位で検査しているが、
これは10人分の検体を1つにまとめて1回のPCR検査をやっていると聞く。陰性なら10人が陰性となる。

そうなると1人あたりの検査に使われる検体量は10分の1になり、感度を10倍落としての検査によって陰性と判断しているということになる。
それでもいいというのならば、それも1つの検査哲学だ。

しかし、こうした簡便な方法をどんどん進めると、検体の劣化も含め、1人ひとりの結果を慎重に見るのではなく、単なる「やってるふり」になっていく。

――経済団体や企業は海外出張などの際に「陰性証明」を求められるという問題があり、だから検査が必要だとしています。
目的がそれですから、対外的に「やってるふり」でもいいと考える可能性は大いにあると思います。
検査をビジネスとして拡大したい人の声もあるでしょう。国際的に「やってるふり」が広がるのかもしれません。

そうなら、私としては、本当に何を見ているのかわからなくなる危険性がありますよ、
それこそ偽陰性だった人がウイルスをまき散らすリスクはありますよ、ということはきちんと言っておかないといけない。

https://toyokeizai.net/articles/-/370721