「新冷戦」の最前線を考える
8/22(土) 10:00配信毎日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/7b0b0f3eabdb72f1d4def9c2efcbb3874656b8c8

英議会の情報・安全保障委員会がまとめ、この日公表されたロシアに関する報告書には、こんな強烈な表現が含まれ、ロシアの英国への介入の実態を認定している。
報告書は具体的事例として、14年に行われたスコットランドの英国からの独立の是非を問う住民投票について、
「信頼すべき論評が、影響力を行使するキャンペーンを企てたことを示している」とし、ロシアの介入があったとの見方を示した。
英議会の委員会は断定しなかったものの、EU離脱を問う国民投票へのロシアの介入もこれまでたびたび指摘されてきた。
具体的には、SNSなどを使った離脱を推す内容の偽情報の大量拡散などの手法を挙げる声がある。

ロシアの情報機関や犯罪組織に詳しい英王立防衛安全保障研究所(RUSI)の上級アソシエートフェロー、マーク・ガレオッティ氏は私の取材に、
ロシアには選挙や住民投票などを利用して、分裂や混乱を深めようとする傾向があると説明する。その政治工作の「肝」の部分について、
「今ある緊張・敵対状態の悪化を利用すること。何もないところに不満を湧き起こす能力は彼ら(露当局)にはない。
貧富の格差やEUの未来(への不透明感)、分離独立運動や反移民感情など(を使って)、状況を悪化させようとする」と分析した。

ここまではロシアの話だが、中国についても新型コロナのワクチン開発情報を窃取しようとした疑惑が持ち上がっている。
米司法省は7月21日、米国や日本、英国などのハイテク企業や政府にサイバー攻撃を行い、情報を盗んだとして中国人2人が連邦地裁に起訴されたと発表した。
中国政府が関与していたとし、ワクチン開発する企業の情報も標的になっていたという。ロイター通信は彼らが標的としていた企業の一つは、ワクチン開発を進めているモデルナ社だったと報じた。

米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は7月7日、米シンクタンク「ハドソン研究所」での講演で、中国が米国でスパイ行為や知的財産の窃取を行っているとして
「人類史上最大規模の富の移転」という表現で激しく批判し、中国が関与した経済スパイ案件は過去10年間で約13倍になったとも指摘した。
米国は7月24日、テキサス州ヒューストンの中国総領事館をスパイ活動と知的財産窃取の拠点だとして閉鎖するなど、中国に対して強い姿勢で臨んでいる。

ファーウェイ排除が広がる中、ドイツは排除を決めていない。ドイツにとって中国は大きな貿易相手国であり、メルケル首相は首相として12回も訪中するなど中国との関係は良好だ。
対中国での欧州の団結や、国際的な中国包囲網が有効に機能するか否かのカギを握るのは、ドイツと言えそうだ。
実際に、ドイツ人が米政府を中露と同じ程度に脅威とみなしていることを示す世論調査結果もあると指摘する。