コロナ恐慌がバイデンを変えた......目覚めた「眠そうなジョー」はルーズベルトを目指す
7/9(木) 20:04配信ニューズウィーク日本版
https://news.yahoo.co.jp/articles/c93581d5a0beb4f6a5f5e66234a8c1fe0a8c4f16

バイデンはこの1年余り、民主党予備選に向けてバーニー・サンダースら急進左派の対抗馬と一線を画し、分別ある候補者として支持を伸ばしてきた。
一貫して革命的な変革ではなく、漸進的な改革を主張。大衆受けするバラマキ政策を掲げる対抗馬には「財源はどうするのか」と切り込んできた。

そんなバイデンが、新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大し多数の失業者が出るなか、党内左派に近い政策を打ち出すようになった。
さらにそれでは飽き足らず、今やもっと大きな変容をもたらす経済再生プランをぶち上げようとしている。

学生ローンの債務帳消しや大学の授業料無償化も盛り込む。公的年金の支給額増やメディケア(高齢者医療保険制度)の対象年齢引き下げにも踏み込もう。
銀行と企業に対する規制も強化する。この際、財政赤字など構ってはいられない。経済を再生させること。そのためにはどれほど大盤振る舞いをしてもいい──。

今のバイデンが目指すのはフランクリン・ルーズベルトだ。
いま求められているのは大胆な行動であり、大恐慌時代のルーズベルトのような指導者、つまり人々の痛みを理解し、人々に希望を与える指導者だ。
バイデンはそう見抜いているのだろう。問題は、彼に「自分こそはその指導者だ」と有権者を説得するすべがあるのかどうかだ。

最新のデータが語る米経済の見通しは厳しい。商務省経済分析局によると、今年第1四半期にGDPは年率4.8%縮小。
議会予算局によれば下半期には回復が見込めるが、第2四半期には年率40%も縮小する。

4月の失業率は大恐慌以降では最悪の14.7%に上ったが、労働統計局によれば、働いていなくても就業者と見なされる「隠れ失業者」を加えれば20%以上に上る。
これはルーズベルトが大統領に就任した1933年の史上最悪の失業率24.9%に迫る数字だ。

国民は少なくとも現時点で、思い切ったニューディール型の政策を受け入れているようだ。
この点は、世論調査の結果にも見て取れる。4月半ばに左派系のグラウンドワーク・コラボラティブが行った世論調査では、
「新型コロナウイルスの経済的影響に対処するために、連邦政府は大規模で抜本的な行動を取るべきだ」という考え方に、回答者の71%が賛同した。

トランプの元盟友で、現政権のホワイトハウス広報部長を務めたこともあるアンソニー・スカラムッチは言う。
「(誰が経済政策を担うことになっても)第2次大戦期に匹敵する巨額の財政支出を行うことになる」と、スカラムッチは言う。
「それ以外の選択肢はない。しばらくの間は、政府が国民に金を配ることになるだろう。いわば、ヘリコプターからお金をばらまかなくてはならない。暴動を防ぐにはそれが不可欠だ」