香港金融人材の日本移住が簡単にはいかない訳
8/14(金) 5:40配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/2c993aaf97eb3353ba4eb6ae1a5924ed03e0890c

日本移住の可能性について話してみたことがある。
しかし彼らの中で実際に移住を決意した人物は1人もいない。それはいったいなぜなのか――。

「娘は日本で育てようかと思うんだ」。筆者はマイケルにそう相談されたが、家族を持つ金融人材はそもそも移住先に何を求めているのか。
マイケルに聞くと、まずは永住権だ、と話す。香港以外の国で永住権を持ちたい、という。ところが、外国人の日本での永住権取得への道のりは険しい。

さらに香港の金融人材が一様に目をむくことになるのが日本の「税率」である。
香港と日本は、双方ともに所得に応じて納税額が上がる累進課税制度(※厳密には、香港は標準課税方式との選択制)。
しかし香港の所得税率が最高17%である一方、日本では45%だ。香港には存在しない住民税だが、日本では10%前後。
つまりこれだけで所得の半分以上を持っていかれてしまう。さらに、キャピタルゲイン税20%、消費税が10%。
子供に財産を残す場合も10〜55%の相続税がかかる。これらはいずれも、香港では非課税だ。

年収3000万円のマイケルの場合、日本では所得税40%と住民税10%の50%がかかり、この時点で手元に残るのは1500万円。
しかし税率17%の香港であれば2490万円と、約1000万円もの差がついてしまうのである(各種扶養控除は除いて計算)。
この結果に、マイケルは驚きを隠さなかった。「香港の家賃はたしかに高い。でもいくら自分でも、年間1000万円以上も支払っているわけじゃない……。
しかも手取りが1000万円減って、さらに家賃や子供の学費もかかるわけでしょう」(マイケル)。
マイケルは、移住先にイギリスやオーストラリア、カナダも候補に入れて再度検討を始めた。
ちなみに、マイケルは移住先の候補に、あえて台湾やシンガポールを入れていない。台湾は「10年以内には、香港と同様の状況になるのでは」という恐れに加え、
金融ビジネスがそこまで発展しているわけではない。シンガポールは永住権を取りにくく、維持するための要件が厳格だからだという。

■日本以外の国への移住も視野に
香港人、と一口に言ってもその考えはさまざま。20代で年収2000万円超のイルマ(仮名・20代女性)は独身の香港人だが「日本は旅行先で十分」と話す。
「香港は中国企業が資金調達をする玄関口として、シンガポールは東南アジアの金融センターとして今後も発展していくでしょう。でも、ごめんなさい。東京には何があるの?」(イルマ)
リック(仮名・20代男性)も同様の意見だ。リックは香港人だが、オーストラリア国籍も保持している。彼のように他国の国籍を保持している香港人は決して少なくない。
「香港人といっても、今の状況を悲観的にとらえる人ばかりではないことを知ってほしいですね。むしろ中国企業の香港株式市場におけるIPOは増えるのではないでしょうか。僕の場合、老後はオーストラリアに移住する選択肢もありますしね」(リック)