河野氏の講演には基本的な誤りも少なくありません。例えば、シナと国交を結ぶ時の話をこう述べているのです。

《そこで中国がやった説明はこういうことです。中国は本当にひどい目に遭った。日本の軍隊に侵略されてひどい目に遭った。中国がひどい目に遭ったのは日本の軍国主義にひどい目に遭ったのだ。
日本人は軍国主義者ばかりじゃない。逆に、日本は、日本人自身は軍国主義の下でおおぜい戦死した。特攻隊隊員もいる。みんな軍国主義のなせるわざだ。だから、中国も日本の軍国主義の被害者だ。
(中略)敵は日本の軍国主義なのだという理屈でした。(中略)そこで、日本軍国主義者の象徴、日本の軍国主義の典型として、戦争犯罪人、A級戦犯の人達は日本軍国主義者の大本で、
絶対に許さないが、それ以外は、この人達の間違った政策で動いた被害者である。(中略)そういう理屈で中国は日本と手を握りました。

そういう理屈で手を握るのだから、少なくても、日本は、日本軍国主義を復活するとか、日本軍国主義を唱えていた人達を大事にする、尊敬するとか、そういうことをされては困る。
ここから派生して、軍国主義の典型、象徴的な人達が祀られている靖国神社に、日本の指導者が行ってお辞儀をするのは困る。嬉しくないね、困るよと言うのです。そこから先は日本側がそうかと。
それなら、いやがることはやめようとなった。靖国神社に息子やお父さん、ご主人が祀られてる人達が靖国神社にお参りするのは何も問題ない。当然だと。
ただし、軍国主義の象徴にだけ、象徴を拝むのは、具合が悪いというのが、今の靖国神社問題なんです》

河野氏はA級戦犯について国交を結ぶ当初から問題になった言い方をしていますが、時間的に全然ずれています。
そもそもこの説明は「指導者=悪」で「国民=善」だとして分断を図るもので、戦後の左翼が好んで用いた革命につながる論理です。
もともとは占領軍がもたらしたもので、東京裁判史観のなかでも最も悪質な論理と言っていい。これは戦前を知らない人のいうことです。

朝鮮戦争が起こったさい、マッカーサーはトルーマン大統領と意見が合わずに米国に呼び戻され、上院の軍事外交合同委員会という重要な公聴会で証言しました。
そこで彼は縷々述べた上で日本の戦争についてこう言っているのです。
「Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security.」
これは「日本の戦争に入った目的は、従って、主として自衛のために余儀なくされたものであった」という意味です。これは東京裁判で「この戦争は侵略戦争ではなく自衛戦争であり国際法には違反しない」と主張し、
「国家弁護」を貫きながらも「敗戦の責任」は負うと述べた東條英機首相の宣誓口述書のサマリーと全く同じ論理で、彼は東京裁判を完全に否定しているのです。