■安倍のコロナ対策はもはや人災

 ジメジメとした湿気にうんざりとした日々から解放され、ようやく梅雨明けを迎えて夏本番を楽しめるかと言えば、今年はそうはいかない。雨の降る日は天気が悪いという言葉の通り、安倍晋三政権の無策が国民を憂鬱な気分にさせている。


 菅義偉官房長官肝いりの観光需要喚起策「Go Toトラベルキャンペーン」の開始後、全国の自治体では新型コロナウイルスの新規感染者数が軒並み急増。PCR検査数が圧倒的に多い東京都のみならず、大阪府や愛知県、福岡県などで1日あたりの新規感染者数が過去最多を更新した。東京都と都民さえ除けば「キャンペーンは問題ない」として感染再拡大期に強行したのが完全に裏目に出た格好だ。国主導で観光や旅行を推奨したにもかかわらず、お盆や夏休み期間中の帰省については自粛すべきか否かで迷走する無茶苦茶ぶりで、もはや日本の「コロナ狂騒曲」は人災であるとの声も漏れている。
■「Go Toトラベルキャンペーン」で専門家を無視

 「東京都以外の実施は差し支えないという専門家の意見を聞いている」

 菅官房長官は7月17日の記者会見で、同22日からの「Go Toトラベルキャンペーン」開始は問題ないとの認識を強調した。だが、前倒ししてまで強行したキャンペーンは菅官房長官の説明とは異なる舞台裏があったようだ。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は7月29日の衆議院国土交通委員会で、キャンペーン開始について「根拠を持った説明ができる必要があると思ったので、もう少し判断を延ばしたらどうですかというふうに申し上げたが、政府はそのことについては我々の提言は採用しないと」と説明し、専門家の意見が受け入れられなかったことを明らかにしている。「専門家の見解」を聞く前に、とにかく東京を除外してスタートするという結論ありきの「政治判断」が根拠というトンデモぶりだ。

 専門家が懸念したようにコロナ感染者は増加の一途をたどっている。キャンペーンを開始した同22日は、1日あたりのコロナ感染者が4月11日の720人を上回り、過去最多を更新した。菅官房長官は、参加登録した宿泊事業者が7月28日時点で約1万800に上り、主なホテル・旅館の大半が登録したと説明し、「感染対策と両立させながら経済を段階的に再開する」と意義を強調するが、感染再拡大期に逆行するような愚策は「もはや人災といっても過言ではないレベル」(民放テレビ記者)といった厳しい声も聞こえてくる。