※歴史では、疫病で労働人口が減ると所得が向上するのです。(日本の場合だと、高齢者がコロナでなくなった場合、医療費や年金支払いが減るので財政負担が減るので、間接的に労働者の税負担が減るのです。)

「疫病で人口が減ると所得が増える」恐怖の法則は新型コロナでも繰り返されるのか=堀井亮(大阪大学社会経済研究所長)
2020年5月18日
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200526/se1/00m/020/022000c

記録が残っている中で最悪のパンデミック(世界的大流行)は、14世紀に世界中で流行し「黒死病」と呼ばれたペストだ。
当時の世界人口約4億5000万人のうち、約1億人が死亡したとされる。特にヨーロッパでは被害が大きく、英国では1348年からの3年間で国民のほぼ半分が死亡し、
人口減少は100年近く続いた。しかしその間、英国の1人当たり所得は倍以上に上昇した。

人口減少により労働供給が減り、人手不足で賃金が上がったからだ。人口密度が下がったので、人手を大量に必要とする農耕から、
広い土地と牧畜犬を用いた牧畜に産業構造がシフトし、1人当たりの生産性も上がった。
英国の人口は16世紀には回復するが、皮肉にも人余りで賃金が下がり、1人当たり所得は低い水準に戻ってしまった。再び所得が上昇するのは19世紀の産業革命期まで待たなければならなかった。

1918年に流行したスペイン風邪(インフルエンザ)でも、世界で数千万人が亡くなった。日本では38万人、米国でも67万人が死亡した。
米ミシシッピ大学のトーマス・ギャレット教授の研究によると、米国ではスペイン風邪による死亡率が高かった州のほうが、翌年までの賃金上昇率が高かった。
米ブランダイス大学のエリザベス・ブレイナード教授らの研究も、死亡率が高かった州や大都市ほど、1920年代に大きく賃金が上昇したことを示している。
労働者が減り、1人当たりに多くの資本(設備)を使えるようになったためだ。