https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59821500R00C20A6FF8000/
米デモ、分断あおる大統領 全土で過激化 首都に傷痕
2020/6/1 16:00

【ワシントン=中村亮】米国で白人警官の暴行による黒人死亡事件への抗議デモが全土に
広がる中、トランプ大統領の言動が国内の分断に拍車を掛ける構図が強まっている。
5月31日には極左集団がデモ暴徒化の背後にいると主張し、徹底的に捜査する方針を表明。
民主党の州知事らのデモ対応への批判も繰り広げた。11月の大統領選に向けて米国の分断
をあおり、保守層の支持を固める思惑がにじむ。

各地でデモ隊の一部が暴徒化し、略奪行為に及ぶ事例が相次いでおり、ニューヨークでも
自衛する店舗が増えている。繁華街タイムズスクエアでは30日以降、突貫工事でショーウ
インドーに破壊を防ぐための板が取り付けられ、重苦しい雰囲気が街を包む。ニューヨー
ク市は6月に部分的に経済を再開すると決めたばかりだったが、新型コロナとは別の要因
で先行きは一気に不透明になった。

南部フロリダ州マイアミでは1日に予定されていたビーチの再開は延期になった。全土で
夜間の外出規制発令も相次ぐ。

大規模デモの発端は25日、中西部ミネソタ州で黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人
警官によって膝で首を押さえつけられ、その後に死亡した事件だ。フロイドさんは「息
ができない」と繰り返し訴えており、この動画がSNS(交流サイト)を通じて拡散した。

AP通信が2019年秋に実施した世論調査によると、黒人の72%が警察による暴力を「非常に
深刻だ」と回答し、白人(26%)を大きく上回った。米国では黒人を暴行した白人警官が
無罪となったことで起きた1992年のロサンゼルス暴動のほか、2014年には中西部ミズー
リ州で黒人青年が白人警官に射殺された際も大規模デモが発生した。