憲法73年、緊急事態に揺らぐ 自由と私権制限、問われる対応 2020.5.3 20:42 共同通信

 新型コロナウイルスを巡る緊急事態宣言が発令中という異例の状況で、日本国憲法施行から
73年となった3日、感染防止のため憲法改正派も護憲派も大規模集会は開かず、
インターネットで主張を配信した。自粛要請で憲法の定める表現の自由などが揺らぐ中、
私権制限強化を求める声も。安倍晋三首相は緊急事態に対応する改憲論議を訴え、
護憲派は「危機を利用して改憲を進めようとしている」と警鐘を鳴らした。

 感染が拡大するにつれ、自民党国会議員からは、大規模災害時に内閣の権限を強化する
「緊急事態条項」を憲法に新設するよう望む声が相次いでいる。
伊吹文明元衆院議長が「憲法改正の大きな実験台」「強制力を持った法律を作れる」と述べるなど、
改憲による私権制限強化が公然と語られるようになった。

 改憲派は国士舘大の百地章特任教授(憲法学)らが出席した「憲法フォーラム」をネットでライブ配信。
安倍首相がビデオメッセージを寄せ、国会の憲法審査会で緊急事態条項の議論を進めるべきだとし
「改正への挑戦は決してたやすい道ではないが、必ずや成し遂げていく」と話した。

 昨年は約6万5千人(主催者発表)が参加した護憲派の「5.3憲法集会」も、
東京・永田町の国会前で有識者が発言する様子をネットで実況中継した。
憲法学者の稲正樹さんが、自粛要請で移動や表現、集会の自由が制限される中
「私たちの力が衰え、物を言わない国民になることを恐れる」と強調。
「(憲法に)緊急事態条項を入れろと言うのは、不要不急の火事場泥棒だ」と安倍政権を批判した。

 大阪市では護憲派団体がパレードを取りやめ、繁華街・難波で小規模な街頭宣伝を実施。
龍谷大教授丹羽徹さん(58)が「改憲で内閣や首相に権限を集中させたいのではないか。私たちの生活や
人権を最大限尊重しないとならないと書いた現行憲法が求めているものとは違う」と訴えた。

 ツイッター上で“デモ”を呼び掛けたのは日本平和委員会。賛同者らは「#コロナ便乗改憲反対」
「#憲法記念日にうちでデモろう」のハッシュタグ(検索目印)を付けて、好きな条文をつぶやいた。
事務局の西村美幸さん(41)は「憲法には生存権や財産権の保障など、
新型コロナ対策にも通ずる理念がある。こんな時こそ憲法を大切にした政治を」と求めた。
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