「コロナ」と「普天間」に見る政府迷走の共通点【コメントライナー】 2020年05月03日09時00分

 ◆静岡県立大学特任教授・小川 和久◆
 自分の本の話から始めるのは気が引けるのだが、
この3月、文藝春秋から「フテンマ戦記 基地返還が迷走した本当の理由」を出版した。
 1996年の返還合意から、民間の軍事専門家として関わってきた回想録で、
普天間基地の移設はおろか、原点である危険性の除去すら実現していない原因に迫ったものだ。
 幸いにして、拙著で厳しく批判した外務省、防衛省の官僚からも、
密かなエールが送られて、著者として望外の喜びを感じている。

 ◆最優先すべきは
 そうした政府中枢からのメッセージの中に、「今回のコロナ問題は普天間と同根」というものがあった。
 私の見方とぴったり重なるものだったので、その角度から、
新型コロナウイルス問題への日本政府の対応を眺めてみたい。
 コロナと普天間に共通するのは、最優先課題を解決することなく、
その結果として、事態が悪化の一途をたどっている点だろう。

 コロナについては、感染拡大を抑え込むことが最優先課題である。そのためには、
一定期間にわたって国民の行動を規制するロックダウン(都市封鎖など)は避けられない。
 ところが、政府は外出や経済活動について「要請」を繰り返すことになった。
 これは自由を奪われることへの国民の不満や、事業主などからの補償要求の噴出を恐れ、
忖度(そんたく)し、新型インフルエンザ等対策特別措置法に、強制力を備えさせなかったからだ。

 要請が繰り返されても、大都市圏から地方や行楽地への人出は抑えられず、増大してさえいる。
 要請に従わないパチンコ店の駐車場には、大都市圏ナンバーの車が数多く見られる。
感染拡大が避けられないことは目に見えている。(続く)