孫正義さん、電力輸入は可能ですか?
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/1992

週刊アエラ5月28日号は「電力は輸入すればいい 原発再稼働だけが道ではない」とのタイトルの記事を掲載した。
朝日新聞は6月4日に「動く極東エネルギー」との特集記事を掲載し、ロシア極東で発電し日本に電力を輸入する可能性に言及した。
実業界でも、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入に熱心なソフトバンクの孫正義社長は、モンゴルで風力発電を行い、海底ケーブルで日本に送電する構想を進めている。

多くのアジア諸国では電力不足が深刻だ。経済成長に電力供給能力が追いつかない。

日本以外のアジア諸国では、実際に今後大きな電力需要の伸びが予想されている。無電化地域を抱える国も多い。
そんななか、発電設備を作って、その電気を日本に輸出する国が出てくるのだろうか。まず、自国の需要を満たすのが先決だろう。
電力不足に悩む国が電力輸出を行うことはありえない。もし行えば無電化地区を中心に自国民の怒りを買うだろう。
自国の需要量を賄う発電、送電設備を建設し、その燃料の手当てを行うだけで手一杯の国ばかりだ。日本の面倒までみてくれる国があるだろうか。

中国も巻き込み大きなネットワークにすれば、ロシアも供給を中断しにくいとの意見も朝日新聞は掲載しているが、
欧州全域のネットワークの基になるウクライナへのパイプラインを簡単に閉めたことからすれば、ネットワークの大きさがロシアの意思決定に影響を与えるとは思えない。

孫正義氏は、自然エネルギー財団を設立し、太陽光発電を日本の各地で行う。電力不足を賄うために利益はなくても行うと聞いたが、1kW時42円という世界でも珍しい高値の買い取り価格を辞退するという話は聞かない。
欧州諸国では買い取り価格制度導入当初、有利な買い取り価格故に異業種から事業者が殺到したが、日本では早々と孫氏が地方自治体を巻き込んで一番有利な場所を確保したように思える。

国民にもたらされる便益と費用を比較すると電力輸入が国民に便益をもたらすことは少なく、再生可能エネルギー買い取りと同じく、費用負担を増やすだけだろう。
その国民が負担した資金が特定の事業者に渡るのを政治はまた許すのだろうか。