新型コロナで浮き彫りになった中国とアメリカの"ウイルス戦争"
https://president.jp/articles/-/33154

新型肺炎の発生・流行を見ていると、その拡大とともに米国と中国はさながら“細菌戦”を実施しているような感がある。
“細菌戦”とは、細菌兵器(生物兵器)を使用して、敵の戦闘力や生産力を弱める戦争のことだ。
とはいえ私は、今回の新型コロナウイルスが「人為的に発生されたものである」と主張したいわけではない。
そうした話の真偽や妥当性はともかく、新型肺炎に対する米中の対応は、“細菌戦”という観点から分析できるのだ。

ここで重要なのは、1月12日の時点では「医療従事者の感染はなく、ヒトからヒトへの感染の明らかな証拠はない」と報告していたことだ。
この報告は、明らかに脅威を低く見積もっている。20日には習近平国家主席が肺炎感染の拡大防止徹底を指示したものの、
14億人の雪崩のような春節大移動をストップさせるだけの重大な脅威情報(公表)は見当たらない。

私は長年、陸上自衛隊でインテリジェンスの世界に身を置いてきた。
その立場から見ると、このときから習近平指導部が「新型肺炎の重大な脅威」を認識していた可能性も、決して捨てきれないと思っている。
仮にそうだとすれば、新型肺炎の危険性を知りながらも、なぜ彼らは春節の大移動を禁止しなかったのか、との疑問が浮かぶはずだ。

今回の新型肺炎の発生においては、中国はその工作の成果を、WHOという舞台で見せつけた。テドロスWHO事務局長の、中国の意向を忖度する姿勢は異常とも言える程だった。
1月28日にテドロス事務局長と会談した際、習氏は新型肺炎について「WHOと国際社会の客観的で公正、冷静、理性的な評価を信じる」と、緊急事態宣言を出さないよう、恫喝に近い圧力をかけた。

一方の米国は、コロナウイルスをシャットアウトして自国に入れないこと、すなわち水際作戦の実施を徹底した。
アメリカ国務省は、1月30日、WHOによる「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を受ける形で、「渡航中止」の対象を中国全土に広げ、自国民に中国訪問を控えるよう呼びかけた。

中国外務省は「悪い手本であり、本当に思いやりがない」などと非難したが、本音は「アメリカは手ごわい」と思ったはずだ。“細菌戦”を仕掛けた中国に対し、米国は素早く防御策を講じた、と私は見ている。