昔、檀林皇后という美しい皇后がおられたが、加持祈祷のため宮中を訪れる僧達が自分の美貌に
迷いを生じることを憂いておられた
檀林皇后は熱心な仏教徒であり、その死の際に「今一度皆に諸行無常を感じてもらいたい」と、
自らの遺体を野に打ち捨てるよう指示をして身罷られた

最期の約束は守られ、皇后の遺体は野晒しとされ、次第に腐り、カラスや野犬に食われ、蛆が湧き
無惨な姿となっていく
その様を見た人々は皆、世の無常、肉体の儚さを改めて感じ、皇后の美貌に心奪われていた僧達も
元通り熱心に修行に励むようになったという

後世、その檀林皇后が自らの遺体を晒した場所で、「女の死体が横たわっており、日毎に腐敗して
崩れていく」などの怪異が起こったという
この場所を、檀林皇后が死装束として纏っていた経帷子に因んで「帷子辻」と言うようになったのは
それからである