「そもそも海軍艦船はコロナウイルスを蔓延させる理想の環境下にあるだけに、今回のような
ケースがさらに増えることを覚悟しておく必要がある。ただ、だからといって、艦船を係留し
て簡単に乗員たちを上陸させ避難させるわけにはいかない。多くの兵器、何十億ドルもする各
種装置、火災発生のリスク、それに原子炉など複雑な問題が横たわっている。それでも今ただ
ちにやるべきことがある。それは、空母全体を消毒し、すでに感染が疑われる乗員たちを上陸
させ、隔離することだ」

今のところ、「セオドア・ルーズベルト」乗員感染者数については、海軍省筋によると「100人
程度」とされているが、クロニクル紙宛てに乗員の一人が「匿名」で通報してきたところによる
と、すでに150〜200人に達しており、今後爆発的に増える可能性があるという。
船舶感染の際の対処をめぐっては、数千人の乗客を乗せた大型豪華客船「ダイアモンド・プリン
セス」号寄港問題が日本含め各国でも大論議となった矢先だけに、今後、「セオドア・ルーズベ
ルト」のみならず「前方展開戦略」を支柱とする他の米海軍艦船にも、コロナウイルス感染が拡
大していった場合、海外基地寄港問題にも波及する恐れもある。

しかも、「ダイアモンド・プリンセス」号の場合は、船客用個室が設けられているため、感染者
を船内の一定エリア内に隔離、感染者数をある程度抑制することができたが、軍用艦船はそうし
た体制になっていない。
 
政治問題デジタル・メディア「The Hill」によると、クロジア艦長の直訴を受けて、米太平洋艦
隊司令部内でもあわただしい動きがみられる中で、ジョン・アキリノ同司令官は報道陣との電話
インタビューで「問題は対応のスピードだ。乗員たちの退避が遅れているのは、収容先の確保に
時間がかかっているからだ。大至急、ホテル確保や野営病床設置の策を講じている。ただ、原子
炉運転などの死活的重要な部門の任務は継続させなければならない」と語った。

ただ、スタブリス海軍大将も指摘する通り、第7艦隊は「ルーズベルト」以外にも空母戦闘部隊、
攻撃型潜水艦多数を広域の太平洋に展開しているだけに、すでに同様のウイルス感染が疑われる
事例が今後、次々に報告されることも予想され、深刻化した場合、米海軍プレゼンスそのものに
も影響が及ぶことが懸念される。