https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56878820X10C20A3TCR000/
[FT]ウイルスが招く信用収縮 公的医療に財政支出を
ラナ・フォルーハー FT commentators 2020/3/18 0:00
日本経済新聞 電子版 Financial Times

市場がまさに金融危機のような反応をみせたのは、「これは金融危機ではない」と、トラ
ンプ米大統領が先週、大統領執務室からのテレビ演説で語ったわずか数時間後のことだった。

投資家は資産を一斉に売り、12日の米株式市場は1987年10月のブラックマンデー以来最悪
の下げ相場となった。債券市場の動きが止まり、銀行に圧力がかかると、米連邦準備理事
会(FRB)は急いで介入し、金融機関が短期資金を貸し借りするレポ市場に緊急資金を供給
し始めた。この動きは、無限の量的緩和やそれ以上の措置が今後あるかもしれないことを
示唆している(編集注、その後FRBは緊急利下げに踏み切ったが動揺は収まっていない)。

では、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに生じた法人向け金融市場の機能不全が
全面的な金融危機になるのは一体いつなのか――。多くの市場参加者、特に銀行はこの問
いを自問していることだろう。

■金融機関の危機にあらず

現在の市場のショック、そして今後訪れる可能性が高い景気後退に希望の兆しが一つある
とすれば、それは2008年のような金融機関の危機ではないことだ。つまり、多額の借り入
れを抱えたグローバルな金融機関の間を連鎖して、各社の資金を枯渇させるような危機で
はないということだ。

当時のサブプライム危機を受けて導入された「ドッド・フランク法(金融規制改革法)」
と国際的な自己資本規制「バーゼル3」はいずれも、そのリスクを軽減するよう設計された。
質の高い資産を大量に保有するよう義務づけられた銀行は、売買を減らし、従来型の貸し
出しを増やすことを強いられた。