一方、ホワイト国に選ばれれば「その国の企業は基本的に、届け出・申告義務が免除され
る」(通商法に詳しい山田香織弁護士)。ただ、必要に応じ、CFIUSが審査に入ることもあ
る。

■「ファイブ・アイズ」に限定
米国でのM&A(合併・買収)に詳しい大久保涼弁護士は「今回選ばれたのは、機密情報を共
有する5カ国の枠組み『ファイブ・アイズ』該当国。ニュージーランドは米国投資が少ない
ので除かれたのだろう」とみる。

専門家の間では「ホワイト国の選定基準は定まりきっていない」との見方が多い。リスト入
りの可能性をちらつかせながら、各国の対内投資ルールを米国の水準に合わせるように、諸
外国との交渉材料に使うとの見方もある。

■中国事業が影響も
日本にとっては様々な場面で踏み絵を迫られる可能性がある。通商政策に詳しい伊藤嘉秀・
米国弁護士は「米国は、日本の対内投資規制の運用を様子見しているのではないか。特に日
中関係の展開を慎重に見極めたいのだと思う」と分析する。
ホワイト国のリストは2年間の期限付きで、動向次第で変わる可能性がある。米財務省はリ
ストを公表した13日に「どんな対内投資基準や米国との相互協力関係があれば免除対象とみ
なすか、選定基準を今後サイトで公開する」と説明したが、運用の行方は流動的だ。大久保
氏は「米国の省庁ではホワイト国を定めることに反対意見も多い。日本や他国がリストに加
わる可能性は現状では低い」とみる。

米中対立が長期化するなか、日本企業は違反リスクを避けるために「自衛」が欠かせない。
自社の中国関連事業が米投資にどう影響するか注意し、米国への投資が拒絶されないように
リスクを管理する必要がある。

米国家安全保障会議(NSC)の幹部だったロッド・ハンター米国弁護士は、「CFIUSは今後、
国ごとではなく、投資家ごとの個別免除手続きを導入する可能性がある」と話す。既にCFIUS
に承認されていれば対象に選ばれる可能性があるといい、「米投資案件が多い企業には使い
勝手がよくなる」とみる。米中にまたがる事業を手掛ける企業にとっては、米当局の規制動
向を注視する日々が続きそうだ。(編集委員 瀬川奈都子)