3月5日には全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕する。全国から代表が北京に
集まる全人代の前後は、中国の政治カレンダーで最も敏感な時期になる。
新型肺炎の感染が収まらず、全人代の開催そのものが危ぶまれるような事態に陥れば、習
政権が受ける政治的な打撃の大きさは計り知れない。手荒にも思える矢継ぎ早の強硬策は、
カレンダーから逆算して打ち出している面がある。

「トランプ米大統領の早期訪中が難しくなるのではないか」。北京の外交筋の間では、そ
んな観測も浮上している。
米中両国は15日に貿易交渉をめぐる「第1段階の合意」に署名した。トランプ氏が2019年末、
第1段階の署名後に「北京を訪問して第2段階の協議を始める」と表明してから、その時期
をめぐってさまざまな臆測が飛び交う。北京に駐在する外交官の一人は「2月訪中も十分に
あり得る」とみていた。

ウクライナ疑惑をめぐる米議会上院の弾劾裁判が本格化するなか、トランプ氏が自ら訪中し
て第2段階の協議をぶち上げれば、11月の大統領選に向けた大きな得点になるからだ。
新型肺炎の拡大で、早期訪中はもはや想定しにくい。トランプ氏は24日、ツイッターで「中
国が(新型肺炎を)封じ込めようと懸命に取り組んでいる」と評価した。「その努力と透明
性に深く感謝する」としたうえで「米国民を代表して特に習近平国家主席に謝意を伝えたい」
と書き込んだ。

4月には、習氏が国賓として日本を訪れる。それまでに事態が沈静化しなければ、訪日の日程
にも影響が出かねない。