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習政権、危機封じ込めへ非常手段 政治日程に影響も
2020/1/26 18:55日本経済新聞 電子版

【北京=高橋哲史】中国の習近平(シー・ジンピン)指導部が湖北省武漢市で発生した新
型肺炎を封じ込めるため、前例のない非常手段に打って出た。武漢市の「封鎖」に続き、
27日からは海外への団体旅行を禁じる。背景には感染の拡大に歯止めがかからず、政治や
外交の日程にも影響が及びかねないという強い危機感がある。

春節(旧正月)の25日午後、人影もまばらな北京の中心部は突然、ただならぬ空気に包ま
れた。「体温を測らせてください」。主な地下鉄駅に多数の白い防護服を着た係員が配置
され、簡易体温計で一人ひとりの乗客をチェックし始めたのだ。
「2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が猛威を振るったときと雰囲気が似てきている」。
当時を知る40代の男性は不安げに語った。
ちょうど同じころ、休館になった故宮博物院の西側に広がる中南海の会議室には、中国共
産党の習近平総書記(国家主席)ら7人の最高指導部メンバーが集まっていた。
「新型肺炎が加速度的にまん延する深刻な情勢を前に、われわれは党中央の集中統一指導
を強化しなければならない」

習氏の重要指示を熱心にメモする出席者のようすは、国営の中央テレビがすぐに放映した。
日本の元日にあたる春節に最高指導部のメンバーが集まり、映像を公開するのは極めて異
例だ。会議は国民に向けた事実上の非常事態宣言だった。

中国政府が国内の旅行会社に対し、すべての団体旅行を中止するよう命じたと官製メディ
アが一斉に報じたのは、その数時間後だ。国民の移動の自由を厳しく縛る「劇薬」は、社
会主義の中国といえども最高指導者の指示がなければできない。習氏の号令一下で、あら
ゆる非常手段が一気に動き出している。