一方、NATOの「内憂」も深刻である。その一つが、フランスのマクロン大統領の「米国に頼らないヨーロッパ独自の安全保障体制を」という主張だ。
マクロン大統領はロシアに急接近し、昨年8月、プーチン大統領を自身の別荘に招いて会談し独自の外交を始めた。
これに対して、米国のトランプ大統領は、「フランスほどNATOを必要とする国はない」と批判し、フランスを牽制した。

確かに、米国を排除し欧州による欧州の防衛という考え方はフランスには古くからある伝統的な考え方だが、これまで成功した試しがない。
第二次世界大戦以降、欧州の安全保障は常に米国の力に依存してきている。

加盟国が合意したGDP比で2パーセント以上の国防費を支出するという最低限の約束さえ守れぬ国が多く、
米国以外では英国、地理的にロシアに近いバルト諸国など8カ国が約束を果たしているにすぎない。

また、NATO加盟国では米国に次いで強力な軍事力を持つ英国の立場も微妙である。
英国は20年1月、EUから離脱することが確定し、離脱後はグローバルブリテンという構想のもと、新たな外交戦略を始めることになる。

 の骨格となるのはこれまでのような欧州偏重ではないアジアへの関与であり、そのパートナーは日本である。
英国は建造した新型空母一隻を21年までに南シナ海や日本の周辺で活動させる計画だ。

英国は今後もNATOのリーダーとして、欧州の安全保障に深く関わることを表明してはいるものの、
これまでと変わらぬ貢献をヨーロッパに提供し続けることができるかどうかは不透明である。