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米中の対立、デカップリングから純化路線へ
秋田 浩之 本社コメンテーター 2020/1/5 5:00日本経済新聞 電子版

世界情勢にとって、今年も米中覇権争いの行方が最大の変数になるだろう。両大国の対立
には加速度がついており、あつれきはさらに強まっていくにちがいない。

昨年1月4日付朝刊の記事で、筆者は米中は対立を強めるだけでなく、経済の切り離し(デ
カップリング)が起きる危険があると書いた。だが、一年を振り返ると、事態は思ったよ
り速く進んでいる。
日欧の当局者や識者の間では、もはやデカップリングの危険があるかどうかではなく、ど
こまで広がってしまうかに懸念が集まっている。
今年の見通しはどうだろうか。状況はさらに厳しくなっているように思う。米国による中
国外しの動きが、さらに勢いづいているからだ。

米商務省は昨年11月26日、同省が米通信網を脅かしかねないと判断した外国の通信機器と
サービスについて、使用を禁じる規制案を決めた。年内にも施行されるとみられる。標的
は中国だ。重要インフラから中国企業を締め出す動きは、それまでもあった。米国は華為
技術(ファーウェイ)などの政府調達を禁止したほか、政府補助金を受ける米通信会社に
も、同社の使用を禁じている。

しかし、11月26日付の規制案の厳しさは、次元が異なる。同省が「脅威になる」と断定す
れば、外国製品やサービスを締め出せる。実行されれば、中国の部品・技術を使った日本
や欧州製品も、取引が禁じられる恐れがある。

こうした動きはデカップリングというより、「純化路線」と呼んだほうが良いだろう。米
国がやっていることは、中国部品を重要インフラから徹底して取り除き、消毒するのにひ
としい。