しかも、関税はその水準で高止まりする恐れがある。米国が交渉で要求していることは
中国にとっては屈辱的で、とても受け入れられるものではないからだ。
また、高い関税はサプライヤー(納入業者)の切り替えにもつながるだろう。そうなっ
たら、新たなサプライヤーにも高率の関税が課されるようになるかもしれない。
(略)
トランプ氏の主張とは異なり、こうした展開がもたらすコストは米国民が、とりわけ消
費者と農産物輸出業者が負担している。皮肉な話だが、最大級の打撃を受けている自治
体の多くは、共和党が牛耳っている地方にある。
(略)
トランプ氏と習近平国家主席はいわゆる「ストロングマン」の指導者であり、屈服した
と見られるわけにはいかないという展開になる公算の方が大きい。
この場合、米中紛争は凍結されるか、2つの超大国の関係が次第に蝕まれて紛争がさらに
深刻になるかのどちらかだろう(可能性は後者の方が高い)。

その結果、米国の同盟国はどのような立場に置かれるのか。
(略)
各国は世界貿易機関(WTO)の庇護下で多国間貿易システムの原則を守るべきだ。
(略)
かつて国際通貨基金(IMF)の筆頭副専務理事を務めたアン・クルーガー氏はある寄稿で、
米国は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の拒絶という愚かな決断を下したおかげで、
TPPに取って代わった「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定
(CPTPP、あるいはTPP-11)」加盟国への輸出について、WTOが合法と認める差別を受
けていると指摘している。
強固な秩序をもって貿易が行われることが利益になると考える国々は、このようなFTAを
「有志によるグローバルFTA」に発展させるべきだ。制度へのコミットメントを受け入れ
る用意があるなら「どの国でも」参加できるFTAだ。
将来的には、そのようなグローバルFTAの参加国が、非参加国から貿易面で違法な攻撃を
受けるほかの参加国を、協調報復で防衛するということも考えられるかもしれない。