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米中の衝突が世界に突きつける試練
EUや日本などの同盟国がすべきこと――マーティン・ウルフ
2019.5.28(火) Financial Times

深刻の度を増している米国と中国の経済紛争によって、世界のほかの国々、特に米国の
昔からの同盟国は一体どのような立場に置かれるのだろうか。
普通の状況であれば、同盟国は米国のすぐそばに陣取るだろう。何と言っても欧州連合
(EU)は、中国の振る舞いについて多くの懸念を米国と共有している。
しかし、今は普通の状況ではない。ドナルド・トランプ大統領の指揮下で、米国はなら
ず者超大国になってしまい、いろいろなことに敵意を示している。

特に重要なのは、多国間の協定と拘束力のあるルールに基づく貿易システムの基本的な
規範に対する敵意だ。実際、同盟国でさえ、二国間関係でのいじめの標的になっている。
では、米中が対立するなか、米国の同盟国は何をするべきなのだろうか。
これはトランプ氏をどうするかというだけの話ではない。二国間の貿易収支に対する同
氏の強い関心は、比較的対処しやすいかもしれない。

厄介なのは、中国の振る舞いだけでなく中国が台頭しているという事実に対しても敵意
を強めている人が、米国人の間で大きな割合を占めていることだ。
保守派の考え方にも大きな変化が見られる。
(略)
国際機関が国民国家から主役の座を奪うべきだという考え方が貿易システムの基礎にな
っていたなどというのは、作り話だ。
貿易システムは、(1)国家は多国間協定を互いに結ぶべきであり、(2)拘束力のある
紛争解決制度によってそうした協定への信頼を強化すべきである、という一対の考え方
が土台になっていた。
(略)
ピーターソン国際経済研究所が先日発表した論文によれば、「トランプが中国に突きつ
けている関税は、かつて米国が1930年スムート・ホーリー関税法を使って課した関税の
平均値とそれほど大きく離れていない」。