https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44406140S9A500C1EA2000/
米特別検察官、司法長官と亀裂鮮明
トランプ氏の幕引き戦略に影
2019/5/2 15:39

【ワシントン=中村亮】2016年の米大統領選でロシアが介入した疑惑の捜査を仕切った
モラー特別検察官と捜査結果を精査したバー司法長官の亀裂が鮮明になっている。バー
氏が3月に公開した捜査結果の概要について、モラー氏が「重要な側面で誤解を生んでい
る」と批判していたことが1日判明した。バー氏は同日の米議会上院の公聴会でトランプ
大統領を擁護する発言を繰り返し、野党・民主党から中立性に欠けるとして辞任を求める
声が相次いだ。

「文脈や本質、中身を完全にとらえていない」。モラー氏は3月27日付の書簡で捜査結果
に関するバー氏の説明に懸念を示した。「捜査結果に関する米国民の信頼確保の土台が揺
らぐ」と厳しい言葉を並べた。バー氏は直前に448ページに及ぶ捜査報告書のうち、「主
要な結論」を盛り込んだ4ページの文書を公開していた。

モラー氏は、トランプ氏がロシア疑惑の捜査を妨げた疑いについて刑事責任を問うべきか
判断を避けつつ「無実を証明しない」と説明した。一方、バー氏は4ページの文書で「証
拠不十分」として推定無罪との考えを示した。この直後にトランプ氏は「完全な無実が証
明された」と宣言した。モラー氏は自身の見解が正確に伝わっていないとの懸念を強めた
とみられる。

バー氏の捜査結果の扱いに関して、モラー氏の考えが明らかになるのは初めて。政治から
独立した立場のモラー氏の不満は「トランプ氏はシロ」との認識が広がりつつあった米世
論に影響を与える可能性がある。トランプ氏はロシア疑惑の幕引きを急いでいるがその戦
略が狂うリスクになる。