https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-01/PFXDHP6K50XX01?srnd=cojp-v2
トランプ氏の新NAFTAはブランド名変わっただけ、革命には程遠い
Shawn Donnan  2018年10月2日 1:13 JST

●大統領は政治的に勝利しても、経済は変わらない可能性
●USMCAは旧NAFTAと撤退したTPPの融合

米国の忘れ去られた人々のために革命を起こす、というのがトランプ米大統領の経済公約
の一つだった。北米自由貿易協定(NAFTA)に「大災害」のラベルを貼って当選した
トランプ氏は、これを書き直してブランド名を変えたに過ぎず、革命には程遠い。

米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)と命名された新協定は、トランプ政権が離脱
した環太平洋連携協定(TPP)の一部条項に合わせて既存のNAFTAを修正した「N
AFTA2.0」と呼ぶに等しい。自動車メーカーを含め在米企業には規制負担が重くな
り、中国などに対する北米諸国の競争力を後押しするより、むしろ損なうリスクがある。

シラキュース大学のメアリー・ラブリー経済学教授は、「トランプ政権はNAFTAの問
題を『是正』するのではなく、『アメリカ要さい』のブロックを積み上げることになる」
と解説。コスト上昇は、在米企業を北米全域からの生産撤退に追いやる可能性があると指
摘した。

それでもトランプ大統領は政治的勝利を勝ち取ったとして、新たな協定を自賛する。米国
が協定から離脱し、相互依存の高いサプライチェーンを一変させると危惧していた企業経
営者らは、合意がまとまったことを歓迎するだろう。

経済のグローバル化に対し、トランプ氏と同じく批判を繰り返してきたダニー・ロドリッ
ク教授(ハーバード大学、経済学)は、「トランプ氏が気にするのは、自分に有利となる
ような合意を取り付けたとの印象を与えることであり、表面的なまやかしだ。貿易協定の
実質的な変更ではない」と指摘。「これまで費やされた政治的リソースや交渉の苦労を正
当化するものは、一切ない」と電子メールで解説した。
原題:Trump’s New Nafta Pact Looks More Rebranding Than Revolution(抜粋)