https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35996700S8A001C1000000/?nf=1
トヨタ、英で生産停止も 合意なし離脱なら
2018/10/2 6:08
【パリ=深尾幸生】トヨタ自動車は1日、英国の欧州連合(EU)離脱が条件を合意できな
い「合意なし離脱」になった場合、英国での生産が停止すると明言した。英国とEUとの
間で物流が混乱し、部品を調達できなくなるためだ。ディディエ・ルロワ副社長(欧州ト
ヨタ会長)は「数日から数週間、大混乱が生じる。生産停止を避ける方法はない」と述べた。

2日に開幕するパリ国際自動車ショーを前に日本経済新聞などの取材に明らかにした。ル
ロワ副社長は「工場が競争力を保てるなら困難な決定をする理由はない」と述べ、英政府
に無関税や、モノの自由な移動の維持を求めた。

トヨタは英国中部のバーナストン工場で2017年に14万4千台を生産した。部品の多くはEU
から調達し、完成車の8割をEU27カ国に輸出している。生産効率を高めるため、部品の在
庫を4時間分しか持たない。1日に50台のトラックがドーバー海峡を渡って工場に部品を納
めており、部品の流れが滞ると自動車生産はすぐに止まってしまう。

17年にバーナストン工場への追加投資を発表。現在は19年初めに発売する新型「カローラ
(旧オーリス)」の生産準備を進めている。英国がEUを離脱する19年3月は、本来なら高
水準の生産を見込んでいるが、生産停止となれば販売の混乱は避けられない。

損失額についてヨハン・ファンゼイル専務役員(欧州トヨタ最高経営責任者)は「はっき
り言うのは難しいが、極めて大きい。一日600台の生産が失われる。耐えられる金額では
ない」と強調した。

ファンゼイル専務役員は将来の投資の見直しも示唆した。「英国生産の競争力が失われれ
ば真剣に将来の事業と投資を見直す必要が生じる」と述べた。同氏はトヨタなど自動車大
手が軒並み生産から撤退したオーストラリアを引き合いに出し、「豪州に起きたことが英
国に起きないとはかぎらない」と強い口調で英政府に警告した。