特にニューヨーク州南部地区連邦検察局の検事らが冗談交じりに、「我々は、いかなる
ものからも影響は受けない独立した地区検察だ」と語ったように、同地区連邦検察局は
外からの干渉、介入に一切屈しないことで有名だ。
以前、ニューヨーク州南部連邦検察局の検察官だったキム・ジュン氏は、「連邦検察に
は一般的に幅広い裁量と権威、権限が与えられている」と指摘する。今は法律事務所ク
リアリー・ゴットリーブのパートナーである同氏は、ニューヨーク州南部連邦検察局が
特に「独立性が高いことで長年に知られてきた」ことを強調する。

様々な法律上の問題を問われつつあることは、大統領任期の残り半分を迎えつつあるト
ランプ氏には重い課題だ。
モラー氏が、大統領選でのトランプ陣営によるロシアとの共謀疑惑および、その捜査か
ら生じる他のあらゆる疑惑について捜査する権限を握る特別検察官に任命されたのは
2017年5月だった。以来、同氏はトランプ氏の側近だった4人から有罪を認める証言を引
き出した(編集注、大統領選でトランプ陣営の選挙対策本部長だったポール・マナフォー
ト氏、同外交顧問だったジョージ・パパドプロス氏、マイケル・フリン前大統領補佐官、
コーエン氏)。トランプ氏は、この一連の捜査と裁判を「魔女狩りだ」として批判してき
た。トランプ氏がモラー特別検察官を解任するのではないか、との見方は常にあった。
トランプ氏は、司法省を通じた通常のプロセスで解任するのではなく、大統領である自分
には解任する権限があると豪語してきたが、モラー氏を解任する可能性は否定している。

■転換点は捜査網が広がったこと

そうした中、モラー特別検察官は自分が進めてきた捜査の一部を司法省の複数の他の部署
に委ねた。
その中で最も注目を集めたのが、ニューヨーク州南部連邦検察局がコーエン氏に関して、
彼が2016年の大統領選挙中にトランプ氏と関係を持ったとされる2人の女性に支払った口
止め料についての捜査だった。この捜査は、モラー氏がこの件に関する情報を提供したこ
とがきっかけだ。