規定によれば、商務省は270日間以内に報告書を大統領に提出する。商務省がクロと判断すれ
ば、輸入制限を大統領に提案する。そして、その90日以内に大統領が輸入制限を発動するかど
うかを判断し、そこで正式な輸入制限が発動される。先に輸入制限が発動された鉄鋼・アルミ
の場合は、調査開始から発動まで338日がかかっている。自動車の輸入への追加課税が行われる
としても、1年近く先のことになる。

●日本の自動車産業に与える影響
現在米国が輸入自動車にかけている関税は、乗用車が約2%、ピックアップトラックなど大型車
は約25%だ。仮にここに25%の追加課税が課されれば、「日本からの輸出には大きな打撃にな
り、関連する部品産業などにも当然大きな影響が出る」(自動車部品製造の中小企業経営者)
と懸念する声が多くなっている。特に、今回、アメリカ商務省は完成車だけではなく、自動車
部品に関しても言及しており、「本当にアメリカが課税をしてくれば、その影響は計り知れな
い」と言う。

中小企業だけではなく、大企業でも不透明さが強まれば、設備投資や雇用などに慎重になる可
能性がある。その影響は、中部経済に留まらないだろう。

●アメリカ国内でも疑問の声が
トランプ大統領の追加課税案については、アメリカ国内からも疑問の声が出ている。例えば、
ラマー・アレクサンダー上院議員やボブ・コーカー米国上院議員は、追加課税によってむしろ
アメリカ国内の自動車産業が痛手を被ると批判している。
特にテネシー州選出のラマー・アレクサンダー上院議員は、40年前の日産進出に自身が支援し
た経験を持ち、テネシー州の製造業の3分の1がすでに自動車関連産業である点、さらに約60億
ドルの輸出に貢献している点も指摘した上で、輸入自動車部品へ追加課税されることでアメリ
カ国内での自動車製造のコストの上昇を招き、競争力を低下させるだけだと指摘している。

日本の自動車メーカーはすでに多くの生産拠点をアメリカ国内で稼働させている。アメリカの
2017年度の生産台数は約1100万台であり、そのうち240万台を輸出している。アメリカが輸入
した車両は約240万台であり、そのほぼ半分はカナダとメキシコからで占められている。こうし
た輸入車両は、外国メーカーだけではなく、フォードやGMといったアメリカメーカーによるも
のも多い。多国籍化している企業活動にとって、今回のような追加課税は、アメリカ企業であっ
ても歓迎できるものではなくなっている。