この関係は金氏にとっても有益だ。在ソウルの外交官は、北朝鮮はトランプ氏との会談
が数日後に迫った段階で、同国を見守る「ビッグブラザー」の後ろ盾があることを示せ
たと指摘する。

米朝両国はシンガポールでの歴史的会談までのここ数週間、心理的に優位な立場を得よ
うと、警告や辛辣な表現を駆使したせめぎ合いを続けている。
トランプ氏の顧問弁護士を務めるルディ・ジュリアーニ氏は6日、金委員長が米朝首脳
会談の開催を「両手両膝をついて懇願した」と述べた。その後も、米国が強い立場にあ
ることを金氏は理解する必要があると語った。

トランプ政権は、北朝鮮にかけてきた「最大限の圧力」が金氏を交渉の場に引きずり出
したと考えている。だが、専門家の見方はもっと懐疑的で、核兵器と弾道ミサイルのプ
ログラムを事実上完成した今、北朝鮮は非常に手ごわい立ち位置にあると指摘する。

金氏は中国の後ろ盾も得たようだ。5月に大連で中国の習近平(シー・ジンピン)国家
主席と会談した際、習氏は金氏に対し、シンガポールでの交渉が失敗に終わっても北朝
鮮政府を支持すると表明したと報じられている。

中国向けが貿易全体の90%以上を占める北朝鮮にとって、中国政府の協力はトランプ氏
による「最大限の圧力」戦略に対抗するために極めて重要だ。米朝首脳会談が頓挫した
場合、習氏が圧力をかける戦略に率先して戻ると見る専門家は少ない。

ハンドン(韓東)大学の国際関係論教授、パク・ウォンゴン氏は「北朝鮮にとっては米
国よりも、中国やロシアに制裁を解除してもらうほうがはるかに容易だ」という。
「中ロは公然とは制裁解除できないにしても、制裁履行の取り締まりの手を緩めること
はたやすい」

これまで敵対していた国々も構図の変化を意識し、北朝鮮指導者との関係強化を急いで
いる。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領はここ数週間で金氏と2度会談。連絡室
を通じた定期的な交流体制の構築を目指している。