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[FT]崩れゆくトランプ氏のインフラ計画(社説)
2018/2/14 17:00日本経済新聞 電子版

取り残された人々のために経済政策を刷新するというトランプ米大統領の主張がまた一
つ、失望をもたらそうとしている。大統領に当選したトランプ氏は、米国民が再び働け
るように政府を積極的に使うという方針の一環として、1兆ドル(約108兆円)のインフ
ラ投資を約束した。

そうした支出の見通しが、大統領当選後の「トランプ相場」による資産価格の上昇につ
ながった。だが、トランプ氏のホワイトハウス入りから1年、その公約は米国の株式市
場と同様にぐらついているように見える。

■連邦予算からの支出は一部だけ

連邦予算からの拠出は10年間で2000億ドルにすぎない。それが州・地方政府と民間部門の
支出を呼び込み、目標に達するのだという。
全米の交通網と水道の約4分の3など、州政府がインフラへの公的支出に占める割合はま
すます大きくなっている。その一方で道路や橋の老朽化、時には危険で不適切な水の供給
という問題に、連邦予算からの拠出の縮小が輪をかけている。

州政府は均衡予算ルールに縛られることが多く、過小投資の傾向にある。多くの州が長期
的な資本計画ではなく年度ごとの収支バランスを前提としてインフラ整備に対処している
ため、計画が長期的に立てられずに中断と再開を繰り返したり、景気や税収の変化によっ
て投資の多寡が変わったりする状態になっている。

連邦政府には、借入能力の強さを生かしてインフラの資金調達に果たすべき役割が明らか
にある。つまるところ、州間高速道路は連邦レベルのプロジェクトだった。ところがトラ
ンプ氏と議会共和党は、財政に余裕があればすべて富裕層向けの減税の財源にしたいよう
だ。増税でしっかりしたインフラ整備の資金を確保する考えもないようだ。