故障の少なさ=耐久性は長らく国産車が誇る美点の1つだ。しかし「国産車の耐久品質が悪化傾向にある」という衝撃のレポートが10月、公表された。
顧客満足度調査の専門機関として、50周年を迎えるJ.D. Powerの調査だ。国産車にいま、一体何が起こっているのか?

不具合指摘件数が悪化した意外な理由

自動車耐久品質調査

J.D. Powerは、自動車に関する数多くの調査を実施し、一部の結果を公表している。「2017年日本車耐久品質調査(VDS=Vehicle Dependability Study)」は、実際自動車を所有するユーザーを対象に、毎年、世界各国で実施されている調査だ
日本では16ブランド118モデルの車種について、新車購入後約3年から5年(37〜54カ月)が経過したユーザーを対象に、過去1年の不具合経験を調査している。
2017年の回答者数は、1万8872人、インターネットを使ったマーケットリサーチの手法で集計した。

同社の指摘はストレートだ。いわく「どのセグメントからも改善が見られず、自動車の耐久品質が下落している」。
J.D. Powerのオートモーティブ部門シニアディレクター 川橋 敦氏によると、「製造不具合」「設計不具合」「商品魅力」の3つに大別する品質調査項目のうち、最大の悪化が見られたのは「設計不具合」だったという。
これは、機械的な性能は満たしていても、“使いにくい”、“わかりにくい”といった評価の場合に悪化する項目だ。

■J.D. Powerの調査レポート詳細はこちらから


2017年の耐久品質調査

最新の耐久品質調査では、2016年に比べて上位3分野の不具合指摘件数が増加。各社しのぎを削る軽自動車についても、シート以外の全分野で不具合指摘が増加した結果となっている。
ユーザーは自動車のどんな「設計不具合」に対して不満を感じているのか。調査で顕著だったのは「オーディオ/コミュニケーション/エンターテイメント/ナビゲーション」への不満だった(満足度は前年から3.5ポイントの悪化)。
具体的には、スマホの普及と共に(一般)消費者にも認知が広まった「車載Bluetooth」、そして自動車に欠かせない「カーナビ」などがその原因になっている。

ブレーキ性能や車体の塗装などとは異なり、Bluetoothとカーナビには共通する特徴がある。「自動車固有の機能ではない」ことと「スマホの影響が極めて強い」ことだ。
ワイヤレスイヤホンやBluetoothスピーカーなどで日常的に「Bluetooth接続」を使う機会は一般的になったし、広義のナビゲーションという点では、現代人がグーグルマップを使わない日はないほどだ。

ユーザーは、スマホで日常的に使っている快適な接続性や、グーグルマップのレスポンス、音声検索の高い認識精度といった使いやすさを「当たり前」のものとして使っている。
この周辺環境の劇的な変化が、いま自動車メーカーに大きな課題を突きつけている、とJ.D. Powerは警鐘を鳴らす。

「スマホを中心としたIT技術の進展によって、ある結果を得るための手段やステップが改善され、私たちの日常の利便性は格段に向上しています。
しかし、ライフサイクルが長く、テクノロジーの採用にどうしても“時差”のある自動車業界が、その速度に追いついていない
、あるいはユーザーとメーカーの接点であるディーラー側での“説明”が必ずしも十分ではない……そんな現状が浮き彫りになったのではないでしょうか」(川橋氏)
興味深いのは、Bluetoothやカーナビの装備が増える(標準的になる)に従って、購入直後の不具合指摘件数も上昇していることだ。

不具合の指摘は今後さらに増加するという予想
新しい車ほど先進機能の装備が増えるため、今後さらに不具合の指摘は増えるのではないか、とJ.D. Powerでは予想している。

「自動車もガラパゴス」ではいけない

なぜ先進装備の搭載によって評価が悪化するのか? もちろんスマホの進化が速く、想定している接続環境と自動車のライフサイクルが合わないという問題はある。ただ、仮にそれだけが要因なら、全世界の自動車の評価が悪くならなければ道理に合わない。
しかし、実はアメリカでは、ここ1〜2年の初期品質調査(IQS)でも、驚くことに韓国やアメリカのメーカーよりも日本車の不具合指摘件数が多くなっているという。
件数が増えた主因は、同じく先進装備だ。端的に言って、日本メーカーには“使いやすさ”が足りない、そう示唆する調査結果なのだ。
川橋氏は、この原因を「国産メーカーが日本基準のものづくりにフォーカスするあまり、ガラパゴス化している側面があるのではないか」と指摘する。


https://www.businessinsider.jp/post-108541