https://mainichi.jp/articles/20180105/ddm/007/030/053000c
北朝鮮展望2018
米専門家に聞く/上 交渉、早くて半年先 カーネギー国際平和財団副会長 ダグラス・パール氏
毎日新聞2018年1月5日 東京朝刊

トランプ政権の北朝鮮政策は成功、失敗の両面がある。国連安全保障理事会で中露両国
の賛成を得て厳しい制裁決議を採択し、国際社会に北朝鮮との関係を根本的に見直すよ
うメッセージを送ることができた点は成功した。

失敗は2点ある。ひとつは、北朝鮮問題を最も緊急な課題に据えてしまったことだ。政
権は危機を実態以上に大きく捉える考えに取りつかれてしまっている。結果を得ようと
して圧力を高めている。北朝鮮の反発を招き、意欲的な核・ミサイル計画の進展を助け
てしまった面は否めない。

二つ目は、中国が問題解決の鍵を握ると思い込んでしまったことだ。もちろん中国が重
要な役割を果たすことには違いないが、すべてを解決できるわけではない。中朝関係は
冷え込んでいる。だから成果が上がらない。

その結果、米国は原子力空母やステルス機派遣などにより軍事的圧力を高める戦術をと
らざるをえなくなった。こうした手法は間違いだと思う。北朝鮮を経済的に封じ込める
ことに加え、たとえ北朝鮮が核兵器やミサイルを保有したとしても、米国の核抑止力が
機能しているということに立ち戻ることが肝心だ。いまの状況は、心理的な駆け引きの
域を超え、北東アジアの安全保障環境を不安定化させてしまっている。