■WTOへ米国を提訴も

世界は米国と北朝鮮の核をめぐる対立にばかり注目し、米中関係がどのようになるかに
ついてはほとんど気にしていない。
トランプ氏はいまだに中国が米国のために北朝鮮を非核化してくれると信じている。一方、
同氏は対中貿易で保護主義的な措置も取りたがっている。米国は中国を筆頭に諸外国の
食い物にされていると思い込んでいるからだ。「(中国が)北朝鮮問題で助けてくれな
いなら、前からやると言っていることをやるだけだ」と同氏は17年末、米紙に語った。
今年、米国は中国に貿易で対抗措置をとり、中国政府は米国を世界貿易機関(WTO)
に提訴する可能性が高い。

米中関係悪化の影響は朝鮮半島を越え、はるか遠くまで広がる。中国は17年、アフリカの
ジブチに初の国外軍事拠点を設け、空母も初めて地中海に派遣した。南シナ海の軍事拠点
化も加速している。
トランプ氏と習氏のにらみ合いではどちらが先に引き下がるか。それは知る由もないが、
中国は自信過剰になっているようだ。イラク戦争から米大統領選まで中国に有利なことが
次々起きた。民主的に選出された指導者に、トランプ氏が侮蔑的な態度をとっていること
も中国には好都合だ。とはいえ、幸運が長続きするはずはない。習氏は米フロリダ州のト
ランプ氏の別荘に招かれ、共に夕食を取っているさなかに、トランプ氏がシリア空爆を命
じたことを肝に銘じるべきだ。中国では多くの人がトランプ氏を張り子の虎だと考えてい
る。そうだとしても、実際に試すのは軽率といえる。
By Edward Luce(2018年1月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/