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[FT]中国、米に対し幸運続かず 2018年は互いの国益むき出しに FT
2018/1/8 2:30日本経済新聞 電子版 Financial Times
 
トランプ米大統領にはごますりが効く。ただ、効果は持続しない。2017年、並み居るラ
イバルを抑え、トランプ氏に最も効果的におべっかを使ったのは中国の習近平(シー・
ジンピン)国家主席だった。北京の人民大会堂でトランプ氏のために豪華な公式夕食会
を催しただけで、同氏の頭から対中貿易不均衡や中国の人権の問題をすっかり吹き飛ば
してしまった。

問題は、習氏が絶えずトランプ氏の機嫌をとらなければならないことだ。同氏にこびを
売り続けると自尊心が傷つき、我慢できなくなる。トランプ氏へのへつらいも「収穫逓
減の法則」で続けても効果は減っていき、18年は恐らくマイナスになるだろう。

自意識が強いといえば、習氏も同じだ。中国はトランプ政権誕生後の数カ月間、責任あ
る行動を取れる国だとの期待を裏切らなかった。だがこれ以上の自制はなさそうだ。
習氏は17年10月の中国共産党大会で、積極的に対外政策を推し進めると表明した。習氏
はあらゆる肩書を手に入れ、自身の思想を党規約に盛り込んだ。個人崇拝も復活してい
る。いまや米中関係は、途方もなく肥大した自我を持つこの2人に託されている。

これは18年にとっては良くないことだ。しかも大きな暗雲も2つ垂れ込めている。一つ
は冷戦以来初めて米国にライバルが出現したことだ。習氏率いる中国は、世代交代する
前に世界一の大国になるという目標を掲げる。旧ソ連と異なり、中国は米国と技術的に
張り合っていける。アジア太平洋地域での米国の優位はもはや盤石ではない。もう一つ
は、米大統領は1時間先のことしか考えないが、中国の指導者は10年単位で物事をとら
えることだ。望遠鏡を持つ習氏と鏡を見つめるだけのトランプ氏のどちらが優位かは明
らかだ。