前頭前野が成熟するのは20代後半頃で、人生経験の豊かさが成熟を促すという研究結果がある。映画や音楽鑑賞、読書といった教養もその機能を高め、虐待など抑圧された幼少期を過ごすと、その働きは弱まるとされている。
 さらに、中傷に対して被害者側が何らかの反応をすることが、攻撃を激化させる「餌」になるという。脳には「報酬系」と呼ばれる神経回路があり、心地良い刺激があった時に活性化され、快楽物質であるドーパミンが分泌される。それが一度記憶されると、脳がその「報酬」を期待するようになる。被害者が中傷に反論したり、中傷したアカウントをブロックしたりすることも、加害者側にとっては一つの報酬となる。
スマートフォン片手に指1本で「こいつ嫌い」と書き込み、「いいね」がつくと、共感する人がいると思い込み、「もっと過激なことをしよう」とエスカレートしていく……。
「怒りが一人のターゲットに向いた途端、自分が何かされたわけでもないのに、徹底的にたたいてしまう。これはもはや依存症……『憎しみ依存』です」