本来は26歳の若い女優にそうした大きな象徴的な意味を背負わせるべきではないのかもしれない。
3・11前後のテレビ出演を見ても、積み重ねたレッスンやスキルとの成長とは別に、彼女は今も天野アキを演じた二十歳の時と変わらない、危ういほどイノセントな部分を持ち続けている。

そしてそれはもちろん、表現者としての彼女の才能と表裏一体なのだが。しかしそれでも、彼女はその不器用さと共に、かつていた場所に戻ってきたのだ 。

災害は今も続く。この数年間に彼女を助けてきた演劇界と音楽界は、今世界的な感染症対策による自粛要請で興行の危機に瀕している。

あれほど穏やかで静かな人柄にも関わらず、彼女の活動はいつも激しい災害の傷痕と背中合わせの運命の中にいる。

『あまちゃん』はまぎれもなく3・11の物語、国民的な災害の記憶と結びついた物語だった。『この世界の片隅に』は戦争と原爆をめぐるアニメーションだ。

東京の大手メディアから閉め出された数年間、被災地である東北の人々は彼女を地元銀行や企業のCMに起用し支え続けた。被爆地である広島の観客にも彼女は温かく迎えられた。

災害の深い傷痕の中で人々が必要とする存在、スターというものがやはりこの世にはいるのだと思う。彼女はゆっくりと戻ってくるだろう。

絶え間なく災害が降り注ぐ、この世界のすべての片隅の象徴として、もう一度この国のメディアの中心に。