それはある面においてはこの映画の作り手たち、ラサール石井らベテラン俳優たちの意図の中にもあったものではないかと思う。

映画パンフレットの中でラサール石井は
「のんちゃんを観に来る人が多いかと思いますが、僕らのこともちょっと観て欲しいです(笑)」
と冗談めかして語っている。

しかし言葉には出さないが、この映画は明らかに、ラサール石井や大平サブローといった確固たる足場を持つベテラン俳優たちが
輝く才能を持ちながら出演の場を与えられない26歳の女優のために作り上げた作品に見えた。

1994年の初演時、物語の主人公であるハローナイツたちは30代後半という設定だった。2020年の今、ベテラン俳優として大御所の位置にある彼らはもう70代から60代だ。
彼らは俳優人生の円熟期に、のんという若い女優を映画に復帰させるために手を引いて引き上げているように見える。