だが『星屑の町』を見た観客は、スクリーンに戻ってきた彼女、「のん」の輝きに目を奪われるのではないかと思う。これほど長くメディアの表舞台から締め出されてきたにも関わらず、彼女の輝きはまったく色あせていない。

かつて朝の連続テレビ小説『あまちゃん』があれほど多くの視聴者を惹きつけたのは、宮藤官九郎による巧みな脚本もさることながら
天野アキという主人公を演じた彼女の持つ鮮烈なパーソナリティに多くを拠っていた。

彼女の中には東北の田舎町の少女の牧歌性と、東京でスターを目指して舞台に立つ現代性という相反する2つの面が同居している。
港北の小さな劇場の中の多彩な客層が象徴していたように、老人と若者、男性と女性という相反する客層を同時に惹きつける国民的スターの輝きが今も溢れている。