政府は16日、観光支援事業「Go To トラベル」について、「東京発着」を補助対象から除外する方針を固めた。新型コロナウイルス感染症対策分科会の会合に案として提示し、妥当と判断された。

赤羽国土交通相は16日午後、首相官邸で首相と菅官房長官、西村経済再生相と会談した。その後、赤羽氏は「現下の感染状況にかんがみ、東京都の発着を対象から外す」と記者団に語った。

具体的には、都を目的地とする旅行と、都内居住者が都外に出る旅行が補助の対象外となり、それ以外の旅行については、感染防止策をとることを条件に、予定通り22日以降のものから補助を行う。
詳細な対象の線引きは今後、詰める方針だ。事業に参加する宿泊施設に対しては、客全員の検温と本人確認、浴場やレストランなどの「3密対策」、客室・共用スペースの換気や消毒の徹底などを求める。

首相は「分科会の議論を踏まえ、(支援事業の)実施をしていきたい」と、首相官邸で記者団に語った。

16日夜に開かれた分科会では、専門家から観光地での感染防止策を徹底することや、感染リスクを避けた形での旅のあり方をつくることを求める声などが出た。
分科会の尾身茂会長は会合後の記者会見で、「感染が広がっていない地域での事業はやっていただければと思う。東京都は感染が落ち着いたら、実施してもよいというのが我々のコンセンサス(意見の一致)だ」と述べた。

国内の旅行代金の一部を補助する支援事業には、新型コロナ問題で落ち込んだ観光需要を喚起する狙いがあった。しかし、都内の感染状況が深刻化し、支援事業によって人の移動が盛んになり、地方に感染が拡大しかねないとの懸念が強まっていた。

児玉龍彦・東京大名誉教授は16日の参院予算委員会の閉会中審査で、都内で感染者の集中している「エピセンター」(感染集積地)が形成されているとの見解を明らかにした。
児玉氏は、「エピセンターの制圧を国の総力を挙げてやらないといけない」と指摘し、PCR検査の増強などの対応の必要性を強調した。

支援事業を巡っては、「事業委託費が高額だ」などと批判を受け、公募をやり直したため、一時は開始が7月から8月にずれ込む公算が大きくなった。
ただ、政府は7月の4連休(23〜26日)に間に合わせることを重視し、最終的に7月22日から開始する方針を決めていた。